再生医療業界の中でも立体的な組織や臓器を培養できるバイオ3Dプリンターで独自のポジションを築くサイフューズが上場した。上場し資金調達を行うことで、どのような未来を描こうとしているのか。その取り組みを投資家向けの説明資料から読み解いていきたい。
サイフューズの事業とは?
サイフューズは九州大学と連携して開発した①独自のバイオ3Dプリンターの装置販売を手掛けながら、組織・培養受託を行い②創薬支援や③再生医療支援を行うことを目指している。
細胞を立体的に培養することで組織や臓器を製造できることが大きな強みとなっている。この取り組みの核をなすのは、九州大学との産学連携で培った剣山メソッドだ。
サイフューズは神経再生、血管再生、骨軟骨再生の分野に取り組むことを想定しているようだ。
この3つの分野で再生医療等製品の承認取得を目指す。
人間の軟骨はすり減ると再生しないと言われている。しかし、細胞のみから成る3D構造体を骨軟骨欠損部に移植すると、骨と軟骨が同時に再生されることを確認したということだ。臨床研究で安全性と有効性を確認したとしている。
創薬分野では、製薬会社を相手方として細胞製品の開発を担う。創薬したい製薬企業の要望を受けて細胞を受託製造する。サイフューズは大きな組織や臓器自体も製造できるノウハウを有していることから、大きな成長余地が見込めるだろう。
受託製造するだけではなく、その製造に使われているバイオ3Dプリンターの販売も行うとしている。現在は第三世代ということで臨床試験レベルの製造品質を実現しているというが、辻の段階では、細胞製造企業が導入できるレベルの商用機の開発を目指しているという。従来の細胞培養装置がシャーレに配置した細胞を平面で育てていたのに対して、サイフューズは立体的に育てることができる。この大きな差が、サイフューズの事業機会につながっていると言えるだろう。
再生医療分野はまだまだこれからの成長分野だ。新しいプレイヤーの参入は想像できるところだが、2030年には100億円以上の売り上げ規模を目指すとしている。
バイオ3Dプリンターを活用した研究は海外でも盛んにおこなわれているが、現状の日本ではサイフューズの独壇場だ。どこまで日本の医療に寄り添った形で事業展開できるか、今後海外市場にも展開をはかっていくのか。サイフューズのかじ取りに注目したい。