再生医療をささえる「ヒト試料」提供機関

再生医療による創薬や治療の取り組みには、研究を支える生体試料の提供機関の存在が不可欠です。ここでは厚生労働省が公開している再生医療情報の中からヒト細胞又は組織の収集・分譲を実施している研究機関等で紹介されている研究機関を紹介していきます。

HAB研究機構(エイチ・エー・ビー ケンキュウ キコウ)

HAB研究機構は、医学・薬学関係者らの専門家有志によって1994年に設立された任意の団体「HAB協議会(Human & Animal Bridge Discussion Group)」が母体となり、2002年7月11日に内閣府より認証されたNPO法人です。HABには、ヒト(Human)と動物(Animal)の架け橋(Bridge)、という意味があり、ヒト由来試料の有用性を広く実証するために、会員の研究者に米国National Disease Research Interchange(NDRI)との国際協定に基づく「ヒト試料」の供給を行う活動を行っています。

HAB研究機構が提供する試料

肝臓(単離細胞含む)、腎臓、膵臓(膵島)、肺、皮膚、小腸、大腸、気管、泌尿器試料(膀胱、尿道など)、乳房、眼球、脳、爪、
軟骨、骨格筋 等のヒト組織(冷蔵、冷凍、組織抽出画分等)

HAB研究機構の主な提供先

国内の大学研究機関、企業等 冷蔵、冷凍、組織抽出画分等 研究用

「つくばヒト組織バイオバンクセンター」(筑波大学)

つくばヒト組織バイオバンクセンターは筑波大学付属病院でヒト試料分譲を行う部門です。手術や検査で採取した組織、血液など(診療に使用された後に残って廃棄するもの)の保管とそれらを利用した研究支援を行っています。組織などの保管を行う試料管理部門と保管した試料から染色標本等などを作製する基礎研究支援部門の2つの部門があります。

試料管理部門では、患者さんから同意を得た上で組織や血液などの一部を保管しています。保管した組織、血液はさまざまな研究・教育機関に配布されて医薬品の開発や病気の原因を見つけるための研究、医学教育に使用されます。基礎研究支援部門(T-PASS)では、研究目的でのFFPE(ホルマリン固定パラフィン包埋)組織を用いた未染切片作製や免疫染色、DNA抽出などの受託サービスを実施しています。

つくばヒト組織バイオバンクセンターの提供するヒト試料

ヒトの内臓組織(病変部・非病変部)、血液、尿、唾液等 筑波大学付属病院での診断・検査後、廃棄する試料(凍結組織、ホルマリン固定パラフィン包埋、凍結包埋等)

つくばヒト組織バイオバンクセンターの提供先

国内の大学研究機関、企業等

独立行政法人 医薬基盤研究所

医薬基盤研究所は、医薬品・医療機器・薬用植物その他の生物資源の開発に資する共通的な研究、開発の基盤整備を図る研究所です。民間企業が取り組みにくい難治性疾患・希少疾患を対象にした研究開発を重点領域の1つとする一方、医薬と健康・栄養の融合領域にも取り組んでいます。融合領域分野では腸内細菌研究への取り組みが有名です。

独立行政法人 医薬基盤研究所の扱う試料

ヒト細胞(脳、肺、肝、腎、胃、血液など各種臓器由来) (冷凍 研究用)

試料提供先

・京都大学放射線生物研究センター
・高崎健康福祉大学

・聖マリアンナ医科大学
・国立成育医療研究センター
・京都医療センター
・産業医科大学
・山口大学
・兵庫医科大学
・神戸大学
・先端医療センター
・神奈川県立こども医療センター
・九州大学
・国立成育医療センター研究所、京都大学iPS細胞研究所
※他機関からの培養細胞の寄託も受け付けている 国内外の大学研究機関、企業等

独立行政法人  理化学研究所バイオリソースセンター 

理研バイオリソース研究センターでは、マウス、シロイヌナズナ、遺伝子、細胞、微生物の5種類の主要なバイオリソースの収集および提供を行なっています。培養細胞として試験管やシャーレの中で増え、安定した性質を持つ細胞が、研究用に開発されています。遺伝子は病気の原因から進化まで、あらゆる生命のしくみを調べるために利用され、医療や品種改良などに応用されています。理化学研究所バイオリソースセンターの公式サイトから試料を検索できるサービスを提供しています。

提供する試料

ヒト臍帯血、ヒト幹細胞(ES細胞、間葉系幹細胞)、iPS細胞、その他 (冷凍組織、ホルマリン固定、パラフィン包埋等 研究用)

提供先

・ナショナルバイオリソースプロジェクト
・京都大学(委託先:iPSアカデミアジャパン株式会社)
・ディナベック株式会社
※他機関からの培養細胞の寄託も受け付けている 国内外の大学研究機関、企業等

特定非営利活動法人  臨床研究・教育支援センター

特定非営利活動法人  臨床研究・教育支援センターは日本における臨床研究、並びに、社会人の臨床医学教育等を推進することを主な目的として平成15年に設置された大阪大学医学部発のNPO法人です。活動の目的は社会貢献であり、大阪大学医学部が直接実施することは難しいテーマでも、社会的要請が強い臨床研究や社会人教育の実施・支援を目的として取り組むために設立されました。

提供する試料

手術にて摘出された臓器の残余組織 (凍結包埋、パラフィン包埋、液体窒素直接凍結 研究用)

提供先

協力医療機関 国内の大学研究機関、企業等

ナショナルセンターバイオバンクネットワーク

ナショナルセンター・バイオバンクネットワーク(NCBN)は、6つの国立高度専門医療研究センター(NC)が連邦型の組織形態で運営するバイオバンク事業です。国民の健康に重大な影響のある特定の病気を解明し克服する事を使命とし、各々の専門性(がん、循環器疾患、精神・神経疾患、感染症・代謝疾患・免疫異常、小児疾患・産科領域疾患、老年病)を生かしながら、臨床と医学研究を推進しています。 各NCが担当する主要疾患の専門医が収集した詳細な臨床情報と患者由来組織等を、疾患の病因・病態・治療研究の基盤となる高品質研究資源として研究者・企業に提供しています。

提供試料

手術時に摘出した組織、血液・血漿、DNA  等 (冷凍、ホルマリン固定、パラフィン包埋等 研究用)

提供先

国立循環器病研究センター国立長寿医療研究センター
国立精神・神経医療研究センター国立国際医療研究センター
国立成育医療研究センター国立がん研究センター

国内の大学研究機関、企業等

国立循環器病研究センター (国循)

国循は、脳卒中、心臓病などの循環器疾患の究明と制圧のために設立された国立高度専門医療研究センターで、対象疾患は、脳・心臓循環器疾患に特化しています。予防、診断、治療法の開発、病態生理の解明、医療従事者教育を行っています。2019年に大阪府吹田市岸部に移転し、一つの建物に病院、研究所及び企業・大学と共同研究を行うオープンイノベーションセンターの3つの機関が入る医療研究機関となりました。

提供試料

心臓弁・血管

提供先

日本組織移植学会、西日本組織移植ネットワーク

はちや整形外科病院

愛知県にある整形外科病院で年間の手術件数が1,500件を超える実績を誇る。患者の同意を得た上での臨床協力をもとにヒト試料提供も実施。

提供試料

骨並びに組織(腱・ジ靭帯)

提供先

愛知医科大学付属病院整形外科学教室
愛知学院大学歯学部第二口腔外科学教室
岐阜大学整形外科名古屋医療センター
名古屋市立大学整形外科名古屋大学整形外科
三重大学整形外科はちや整形外科
浜松医科大学整形外科
藤田保健衛生大学付属病院整形外科学教室 – – 移植用

一般社団法人  日本スキンバンクネットワーク

日本スキンバンクネットワークは広範囲熱傷の患者救命のための活動を行っており、年間100件近くのスキンバンクからの同種皮膚の提供実績を積み上げている。一例をだすと、東海村放射線被曝事故、サハリン火炎瓶テロの被害者、福井原発事故、京都アニメーション放火事件などの被害者に同種保存皮膚を提供し重症熱傷患者の救命に貢献してきた。日本ではドナー不足から同種保存皮膚の絶対量は不足している上、保険適用材料としても認められていない。無償で提供を受けた貴重な医療材料である皮膚を保管し、移植治療用に保管する活動を行っている。

提供試料

皮膚 ・日本臓器移植ネットワーク

提供先

・施設会員:全国に85病院 – – 移植用

東京都健康長寿医療センター

超高齢社会がピークを迎える2040年に備えて、健康寿命を阻害血管疾患、がん、認知症、糖尿病、フレイル(転倒)、慢性疼痛(腰痛)、感覚器(難聴、視力障害)への取り組みに力を入れている。

提供試料

ヒト脳(健常脳、疾患脳く、健常と疾患の途中段階の脳) – 凍結組織、パラフィン包埋 研究用(開頭剖検症例の収集、DNA抽出)

提供先

東京都老人医療センター/東京都老人総合研究所

メディカルスキルアップ編集部
メディカルスキルアップ編集部http://www.medical-skillup.com/usr/local/bin/wp-cli.phar/api
メディカルスキルアップ編集部では、メディカル業界で活躍する次世代プレイヤーが知っておくべき情報をお届けしていきます。

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